I Sang Dixie - Dwight Yoakam 和訳
直訳して「私はディキシーを歌った」。ドワイト・ヨアカム。
前回の「愛という名の欲望」でドワイト・ヨアカム(ヨーカム)を初めて聴いて、ねこあるきはしばらく取り付かれていました。
そこで、ヨアカム氏の有名なやつを2~3曲和訳してみようかと。
手始めに、「アイ・サング・ディキシー」です。
ヨアカム氏は、日本では全然知られていないので、この和訳は果たしてアクセスがあるのか。
まず「ディキシー」という歌は、「ディキシーランド」とも呼ばれます。
本来、アメリカ南部で大衆向けのショーで出された曲ですが、南北戦争のときに、南軍が行進曲として採用したそうです。
ご参考までに、「ディキシー」の歌をさわりの部分だけ、軍歌っぽく和訳しました。
メロディは日本人でも聴いたことがある、なじみのある曲です。
▼「ディキシー」の歌。1916年。
▼戦時下の「ディキシー」。士気高揚する南軍のイメージです。
"Dixie" ディキシーの歌。ちょっとだけ和訳
Oh, I wish I was in the land of cotton,
はるか望むは綿花の大地。
Old times there are not forgotten, (Alt Original: Cinnamon seed and sandy bottom,)
古き良き時代を忘れ得ぬ。
Look away, look away, look away Dixie Land.
手放すか、逸らすのか、背くのか、ディキシーの地を。
In Dixie Land, where I was born in,
我が生まれ出づるはディキシーの
early on one frosty mornin',
霜降るとある明け方に。
Look away, look away, look away Dixie Land.
手放すか、逸らすのか、背くのか、ディキシーの地を。
とりあえず以上です。
さて、ドワイト・ヨアカムの、「I Sang Dixie 私はディキシーを歌った」です。
この「ディキシー」を歌ったのはどんな場面でしょう。
PVが無いので、オフィシャルから動画を持ってきました。
▼ライブか、テレビ番組か。CD版とは違い、弾き語りです。
隣にいるのはバック・オウエンズ。カントリー音楽の大御所です。
"I Sang Dixie" 和訳
I sang Dixie, as he died
彼が亡くなったとき、俺の口をついて出たのは
悲しみの言葉ではなく、ディキシーの歌だった。
But people just walked on by, as I cried
嗚咽はやがて声になり、俺が泣き叫んでも
人々は知らぬ顔で通り過ぎていくだけ。
The bottle had robbed him, of all his rebel pride
彼はいつも酒瓶を抱えていた。
酒は救いではなく、
彼から南部を愛する反骨の精神と、誇りを奪い去ってしまった。
So I sang Dixie, as he died
だから俺は彼が亡くなったとき、ディキシーを歌ったんだ。
He said way down yonder in the land of cotton,
彼はよく言っていた。
あの綿花に富んだ大地は随分と廃れてしまった。
old times there ain't near as rotten
俺らはもう、だいぶ長いこと南部へ近づいてすらいない。
As they are on this damned old L.A. street
このくそ忌々しいロサンゼルスの古びた通りで腐っていくだけなのさ、と。
Then he drew a dying breath,
そして彼が息を引き取るとき、俺は彼の体を抱き寄せ
and laid his head against my chest
頭を俺の胸にあずけさせた。
Please Lord, take his soul back home to Dixie
主よ、どうか。彼の魂をディキシーへ。
彼の生家である、あの豊かな南部の大地へ導き給え。
御霊が永遠に安らかならんことを。
And I sang Dixie, as he died
そう、彼が天に召されたとき
俺はディキシーを歌ったんだ。
But people just walked on by, as I cried
そして俺は声をあげて泣いた。
しかし道行く人々は、何食わぬ顔で通り過ぎていく。
The bottle had robbed him, of all his rebel pride
彼が空けた酒瓶の数は、苦悩の深さを物語っていた。
そこには最早、南部兵士の誇りを持った彼の姿はなかった。
So I sang Dixie, as he died
俺はむくろとなった彼に、ディキシーを歌った。
He said listen to me son while you still can,
彼は言っていた。
なあ、せがれ。よく聞きな。お前ならまだ間に合う。
run back home to that Southern land
今すぐ本当の我が家、あの南の大地へと帰るんだ。
Don't you see, what life here has done to me
目に浮かぶだろう。
そこに本来、あるべき人生が待っているってことを。
Then he closed those old blue eyes,
そして彼は、年老いた青い瞳を静かに閉じた。
目元には深い皺が刻まれていた。
and fell limp, against my side
やがて力が抜け、まだ体温の残る身体を
俺の傍らへぐったりともたれかけた。
No more pain, and now he's safe back home in Dixie
もう苦しむことはなく、痛みもない。
今、彼の魂はディキシーの生家へ戻り、
あの頃の様に、揺り椅子をゆらしながら穏やかな笑みを湛えているだろう。
And I sang Dixie, as he died
俺は悼みの中、ディキシーを口ずさんだ。
逝く彼のために。
But people just walked on by, as I cried
道急ぐ人々は立ち止まる者もなく、
俺の泣き声は雑踏の音にむなしくかき消された。
The bottle had robbed him, of all his rebel pride
冷たく転がる数々の空っぽの酒瓶に、彼の声なき悲痛な叫びを聴いた。
酒は彼を変えてしまった。
南軍の気骨あふれる兵士のプライドを、根こそぎ奪い去っていった。
So I sang Dixie as he died
俺はディキシーを歌ったんだ。
彼が亡くなったときに。
I sang Dixie as he, died
彼に捧げよう、ディキシーの歌を。
以上です。
▼字幕付き動画。右下のボタンで字幕の表示。
私が好きで作っただけで、アクセスがあったら驚きます。
ドワイト・ヨアカムの和訳、つまり日本語としてのドワイトが、どれだけ需要があるか分かりませんが、取りあえずアメリカの歴史を一から勉強する羽目になったねこあるきです。
イギリスから入植と独立、奴隷の歴史、なんという複雑な。
ビリー・ホリディの「奇妙な果実」まで聴いたのですが、アメリカ南部って結構、根が深い地域ですね。
※↑のリンク先は、ウィキペディアの「奇妙な果実」の項目です。
歌詞と和訳が載っていますが、事実とはいえショッキングな内容なのでご注意ください。
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