2018年7月29日日曜日

Ogre Battle - Queen 和訳

Ogre Battle - Queen 和訳


「オウガ・バトル」はクイーン2のブラック・サイドです。
逆回転のイントロに、未知の世界へ放り込まれるような感覚に陥ります。

さすがはフレディーのファンタジーですね。

歌詞のはじめ、「once upon a time ワンス・アポン・ア・タイム」は、日本語の「むかーし、むかし」に相当する英語なので、どうも童謡のような、のんびりとした和訳になりそうでしたが、こんなロックな童謡は無かろうと思いなおしました。

ファンタジーでも中二病っぽくなく、仰々しくもなく。
世界観を出すのに、割と苦戦しました。


▼オフィシャルの「Ogre Battle オウガ・バトル」は、沈黙から始まります。
エラーではなくて、ホワイト・サイドと分けるための仕様です。





"Ogre Battle" 和訳



Now once upon a time 
「いにしえより伝わるは…」

- an old man told me a fable
しゃがれた声で、老人は僕に寓話を語りだす
僕は我を忘れ、夢中で聞き入る

When the piper is gone 
笛吹きが子ども達を連れ去り

- and the soup is cold on your table
団らんを待つスープは、主を失い
テーブルの上で、ただ冷たくなるばかり

And if the black crow flies to find a new destination 
そして、漆黒のカラスが飛び交えば、それが前兆となるだろう

- that is the sign
時は満ちた


Come tonight
来るべき今夜

Come to the ogre sight
人喰い鬼をひと目見に

Come to the ogre-battle-fight
いざ、鬼の決戦をこの目にせんと連れ立とう


He gives a great big cry and he can swallow up the ocean
やれ、鬼がひと声、雄叫びを上げれば
その大口は、海をも飲み干す勢いで

With a mighty tongue he catches flies 
大蛇のような舌は、蝿すら逃さぬ貪欲さ

- the palm of his hand is incredible
掌の広大なことは、とてもこの世の物とも思えぬ

One great big eye 
ギョロリと巨大な一ツ目が

- has a focus in your direction
物陰にひそむお前に狙いを定め
見ている此の方も命がけ

Now the battle is on
さあ、火蓋が切って落とされる

Yeah yeah yeah

Come tonight
今夜がその時

Come to the ogre sight
伝説の鬼を、我が目に

Come to the ogre-battle-fight
鬼の死闘を、きっと瞼に焼き付けよう


The ogre men are still inside
鬼どもは、未だ中に潜んでいる、

The two-way mirror mountain
その鏡の山には二ツ穴が

Gotta keep down right out of sight
奴らの目に届かぬよう、黙していよ

You can't see in but they can see out
お前の目には何も見えないだろうが
鬼は確かにこちらを捉えている

"Keep a look out"
いいか、気を抜くな

The ogre-men are coming out
鬼どもが続々お出ましだ

From the two-way mirror mountain
鏡の山の、二ツ穴から

They're running up behind you and they're coming all about
お前の背後まで一気に押し寄せ
気付けば、ぐるりと囲まれている

Can't go east 'cos you gotta go south
日の出る方角へは、今さら逃げられない
しまった、こいつはどうにも分が悪い


咆哮飛び交う、さながら地獄の喧騒の中
生きた心地もせずに固まっていると、やがて様相を変えていく


Ogre-men are going home
鬼どもは、それぞれに引き上げ

And the great big fight is over
鬼気迫る闘争は、終わりを告げる

Bugle blow, the trumpet cry
ラッパは号令を鳴らし
トランペットはファンファーレを叫び

Ogre battle lives for ever more
鬼の決戦は、永遠に語り継がれる


You can come along
是非に、ともがらよ

You can come along
この機を逃す手はあるまいよ

Come to ogre battle
臨もう、人喰い鬼の闘いを



request via Youtube



以上です。



▼字幕付き動画を作りました。
ハマースミス・オデオン1975年。「オデオン座の夜」から



おまけ代わりに。
鬼について、調べました。

一つ目の鬼は「サイクロプス」で、ギリシャ神話に登場します。
天空の神ウラノスと、大地の女神ガイアの間に生まれた種族で、怪力と鍛冶を得意としますが、知能は低く、人間を食べます。

普段は、一人で険しい山に住み、牧畜や鍛冶で生計を立てています。


「オウガ・バトル」に出てくる「オウガ」という鬼は、怪力ですが鍛冶はしません。
その代わり、変身したり、身長を変えたり、群れや部下を連れ立つこともあります。

人間を食べたり、金銀財宝を奪ったりします。
「オウガ」の名前は、1697年シャルル・ペロー作の「長靴をはいた猫」に出てくる「オグル」が語源となっています。

「オウガ」の命名は意外と新しいんですね。


この他にも、「ハーメルンの笛吹き」や、イギリスの伝承や、幽霊など調べる羽目になりましたが、結論として、一般的な「オウガ」の解釈で「オウガ・バトル」は和訳しても大丈夫、と判断しました。


▼人喰い鬼は、こんなイメージだろうか。
(映画「ジャックと天空の巨人」より)






4 件のコメント:

  1. この曲を初めて聴いたとき、迫力ある曲との印象を受けました。
    ねこあるきさんの訳から、その迫力や緊張感がすごく伝わってきます。
    まるで、本当に鬼たちに囲まれているかのようです。
    おそらく、他のどんな訳よりもリアリティがあると思います。

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    1. はなおのぺらさん、ご無沙汰しております。

      不肖ねこあるき、実はクイーン2は苦手だったりします。
      (語彙力の問題です)
      フレディの世界を、日本語で伝えようとするのは楽じゃありません。
      英語のままの方がいいんじゃないかと、挫折気味です。

      お気に召していただき、消滅しかけた気力が湧いてまいりました。
      有難うございます!

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  2. お暑うございます、高橋です。
    いつもねこあるきさんの和訳ブログの❝解説❞を楽しみにしてます。「オーガ」一つとっても、語源、背景、どうゆう方向で訳すべきか、等々私が和訳を始めようとして諦めの境地に至る理由がここにあります。暑いですが、無理の無い範囲でこれからも良い仕事を残してください。

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    1. いや、本当に暑い日々が続きますね、Mr.Master-Stroke。
      コメント有難うございます。

      高橋さんのすごいところは、和訳するにあたり「調べる」という事を最初に持ってくるところだと思います。
      ただ英語だけ機械的に和訳するものではない、ということをよくお分かりになっていらっしゃる。

      ねこあるきは語彙力に限界を感じて、英語辞書より日本語辞書ばかり引っ張っている有様です。
      日本語は本当に難しい。

      ぜひ、高橋さんも諦めてしまわないでくださいませ(笑)

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