Mother Love - Queen "マザー・ラブ" クイーン和訳
フレディーの「母胎回帰」と言われる「マザー・ラブ」
曲の最後は「Goin' Back ゴーイン・バック」(ラリー・ルレックス名義、ファーストアルバム「旋律の女王」の2週間前にリリース)で閉じ、赤ん坊の泣き声が聴こえます。
「Goin' Back ゴーイン・バック」はカバー曲ですが、回帰の演出にふさわしい曲名ですね。
あまりにも偶然の一致すぎて、まるでデビュー時から運命を暗示しているようで、ちょっと怖い。
「母胎回帰」や「胎内回帰」は、生まれ変わりたいという意味ではありません。
自分をすべて包み込み、温かなやすらぎを求める気持ちを指し、誰もが持っている願望とされます。
色々あったけれど、最後に行きつくところは、母親に抱かれているような安心感、と言いましょうか。
「母」は、「母なる大地」のような比喩で、自分の母親がどうこう、というわけではないです。
ただ、フレディーにおいては、母親が関係しているようにも解釈できます。
「Liar ライアー」の歌詞では
『お母さんの望む人生を歩みます』と繰り返しつつ
『いつでも自分から死ぬことは出来るんだ』と結び、
「Bohemian Rhapsody ボヘミアン・ラプソディー」では、
『お母さん。僕は今、人を殺した』
『僕がいなくなっても、何もなかったようにして』とあるので
フレディーは、母親が求めた理想の自分を、自分で殺したと推察されます。
理想の自分を殺して、好き勝手に生きてきたけれど、最後には母親の待つ家へ帰る。
「Mother Love マザー・ラブ」は、「僕を受け入れて」と、母親への嘆願するような呟きが印象的で、フレディーが人生の果てに望むのは、原点への回帰と受け取れます。
▼オフィシャルのPVは、歌詞の内容と全然関係がない、なぜかSF仕立てです。
▼関係ない映像なら、いっそ無い方が良いと勝手に思うので、音声だけの動画もどうぞ。
"Mother Love" 和訳
[Verse 1: Freddie Mercury]
(フレディーのヴォーカル)
I don't want to sleep with you
ベッドを一緒に温めて欲しいわけじゃない
I don't need the passion too
胸を焦がす情熱も、今はただ静かに
I don't want a stormy affair
嵐のような束の間の情事も遠く
To make me feel my life is heading somewhere
激動の人生を過ごした僕が、こんな気持ちで何処へ向かうのか
All I want is the comfort and care
ひとえに、心地よい安らぎだけを求めている
Just to know that my woman gives me sweet
そう、恋人が僕を包む優しさにも似た
Mother love ah ha
すべてを許容する、母の愛を。
I've walked too long in this lonely lane
道なき道を、たった一人で遥か遠くまで歩んできた
I've had enough of this same old game
スリリングだった駆け引きも、飽くほど繰り返せば
もう充分で
I'm a man of the world and they say that I'm strong
僕は世慣れた、強かな人間だと誰かは言う
But my heart is heavy, and my hope is gone
だけど、心は重く沈み、もう何も望まない
Out in the city, in the cold world outside
都会の片隅で、冷たく世知辛い世の中に囲まれて
I don't want pity, just a safe place to hide
同情を引く気はないけれど
ひそかに身の置く、安らかな場所を僕はただ。
Mama please, let me back inside
お母さん、どうか
僕を受け入れて
I don't want to make no waves
このまま何も感じなくなって
心に波風ひとつも立たなくなる前に
You can give me all the love that I crave
あなただけが出来る、僕が渇望した愛をいっぱいに注いで欲しい
I can't take it if you see me cry
僕が限界に達したとき、涙を見せてしまうだろうから
I long for peace before I die
せめて息を引き取る時は、
心から安らげる場所でありたいとずっと願ってきた
All I want is to know that you're there
それが何であるか分かった今、他に何もいらない
You're going to give me all your sweet
誰よりも僕を大切に想い、
持てる限りの愛情を、無償で与えてくれる
Mother love ah ha (mother love)
僕が求めるのは母の愛だと。
[Chorus: Brian May]
(ブライアン・メイのヴォーカル)
My body's aching, but I can't sleep
身体は悲鳴を上げ、ひどい痛みが僕を眠らせてくれない
My dreams are all the company I keep
かつての輝かしい軌跡が僕を支え、まだ生かしてくれる
Got such a feeling as the sun goes down
まるで一日中、目いっぱい遊び回ったあと、
日が暮れてきたあの感じに似ている
I'm coming home to my sweet
僕はこれから家に帰るよ
暖かで優しい
Mother love(mother love)
お母さんの元へ
[Outro]後奏
(Mother love mother love love love love love)
God works in mysterious ways
Eeeeh dop, de dop, dep dop
I think I'm going back to the things I learnt so well in my youth
Thank you for your request, Mr.T.
以上です。
「マザー・ラブ」収録について
フレディーは体調が悪くなった時、スイスのモントルーにある、静かな「マウンテン・スタジオ」で、体調の良い時に合わせて収録がされました。
その中で「マザー・ラブ」が最後の作品ですが、未完で、最後のパートをブライアン・メイが代わりに歌っています。
「マザー・ラブ」収録時のフレディーの様子を、メイ氏は語っています。
「フレディーはウォッカを飲み、非常に高いキーを情熱的に歌い上げた。
そのあと『もう今日はこれ以上できない。またこの次にしよう」』って言ったのに、二度と彼が戻ってくることは無かったんだ」
最後のインタビューでフレディーいわく。
「僕にとって大事なことは、幸せでいること。
残された年月を、できる限り生き生きと楽しく過ごすこと。
インタビューでこんなに気持ちを打ち明けたのは初めてだけど、それも飽きてしまったよ」
何も望まない、静かに眠りたい。
きっと後悔は無いのでしょう。
おまけ
のちに「マウンテン・スタジオ」は閉鎖され、取り壊したと思われていたのに、手つかずで残っているのが見つかり、今では当時のスタジオを再現した観光施設になっています。
利用料金は、なんと無料。
日本語のパンフレットもあり、自分で好きに音楽のミックス体験もできます。
お得感が半端ないですが、スイスまでが遠い…。
ねこあるきが近くに住んでいたら、毎日入り浸るのに。
スイスにお越しの際は、是非お立ち寄りください。
▼マウンテン・スタジオの紹介動画。字幕付いてます。
ご参考までに。
マウンテン・スタジオのホームページはこちらから
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高橋です、3月中にアップされていたのですね?! いつもメールでアップの連絡が来るはずなのに今回は無かったので見過ごしていて遅くなりました。
返信削除先ずは素晴らしい意訳の出来です! 冒頭、他訳のように「フレディーが他の女と寝ていてママ同様の愛を求める」のでは無い内容で良かったと言う思いです。また、私の疑問であった「フレディーは人生を後悔していたのか?」と言う命題も「そうでは無く、自分をすべて包み込み、温かなやすらぎを求める気持ち」と解説して頂きありがとうございました。
「理想の自分を殺して、好き勝手に生きてきたけれど、最後には母親の元に帰る原点への回帰」が死を迎えたフレディーの本当の気持ちがしみじみと分かる良い訳です。モントレーのスタジオの事も詳しくご紹介して頂き、また涙が出てくるようです。
ただ、ねこあるきさんが「涙で訳が進まなかった」のかどうかがコメントされていないので、どうだったのかと思いました。
Mr.Fairy Feller。
削除ブログをアップするとメールで連絡が行くことを初めて知りました。
お久しぶりです♪、ねこあるきです。
その節は、長らくお待たせいたしてしまって申し訳ございません。
リクエストをくださった高橋さんに、和訳がお気に召していただけて嬉しい限りです。
私も他の和訳には目を通すようにしてはいるのですが、「なんで?」と思う箇所があって、なかなか曲の世界に入れませんでした。
じゃあ、いざ自分で和訳となると、ダメですね、これは。いかんですよ。なんと恐ろしい。
死に直面したフレディの「ショウ・マスト・ゴー・オン」のよう生命に執着する力強さとは正反対で、安らかに受け入れていて、あとは目を閉じるだけの心境がダイレクトに伝わってきて轟沈しました。
しばらく引きずりましたよー。
人の最期、安らかな死というものはこういうものなのかと、「僕はこれから家に帰るよ」のくだりと、ブライアンが残りのパートを継いでいるあたりがもう、なんということでしょう。
泣くとかいうレベルを超えてます。
やっと平静を装ってブログを書くまで時間がかかりました。
あーもう、高橋さんは相変わらずMaster-Strokeです。
ご返信ありがとうございました。
返信削除今でこそLGBTに対する理解が少しは出てきましたが、当時の偏見等、Freddieは家族を持てない人生や運命に思い悔やんでいたのかどうか?は歌詞には表れていないようで、それはそれで良いと思います。Freddieぐらいの天才になると予知含め凡人とは違うようで、楽曲「A Winters Tale」「Was It All Worth It」「These Are The Days Of Our Lives」「I'm Going Slightly Mad」等にそれを匂わせる内容が多く見られてグッと来ます。
前回「A Winters Tale」を引続きリクエストしましたが、内容は描写的だし今回の「Mother Love」で充分分かった感じがしますので、リクエストは取り下げます。
ブログのお知らせメールは、一番下の公開/プレビューの右の「お知らせを受け取る」に☑を入れると登録メールアドレスに連絡が来るようです。
高橋さん。
削除フレディーは「愛に生きる」ことを人生のモットーとしているようで、愛のためならば、そこに性別などの垣根は無いようです。
この辺りからもう、普通じゃないですよね。
ただ、メアリー・オースティンさんは別格で、彼女以上に男性を愛することはないらしいですよ。(なんか男性の恋人に対して失礼な気も…)
そして家族同然だから、実質結婚しているようなもの、だとか。
言っていることが分かるような、分からないような。
うーん、やっぱり分かりません。
フレディーは生まれも特殊(ゾロアスター教のペルシア人かつ長男)ですし、人に理解できない苦悩もあったでしょうけれど、楽しく幸せであるために全力を尽くした一生だったのではないかと、マザー・ラブを和訳してみて思い至りました。
和訳の機会をいただいて、いつもながら有難うございます。
ところで、リクエスト取り下げられるとは、ちと残念な気もします。
いつでも歓迎いたしますので、是非またリクエストをお願いします。
「お知らせを受け取る」は、どうせグーグルから、勧誘か何かのお知らせだと思っていました。
ブログの更新を連絡するためにあったのですね。
こうやって文明の利器から少しずつ取り残されていく、ねこあるきです。
ご丁寧なメッセージありがとうございました。ねこあるきさんの訳を見て以来どの曲もざわざわしてしまってしばらくやられたまま暮らしています。
返信削除だいぶ生きてきてはじめての感覚…そしてこれからは前の物も少しずつ見させてもらいますね。
愛とはさん。
削除クイーンの、フレディの晩年の曲は、私も心情的に恐ろしくて中々聴けません。アルバム「メイド・イン・ヘブン」「イニュエンドウ」からの曲は、和訳もリクエストをいただいて、ようよう重い腰を上げた次第ですが、やはり平穏ならざる心境がしばらく続きました。(何故でしょうね)
私自身は、あれから深く考えることも増えましたが、ブログはクイーン初期のものを中心に、華麗な曲の世界を和訳しておりますので、どうぞお気軽にご覧いただければ幸いです。
ラリー ルレックス名義の「goin' back」の訳詞をリクエストします。初期フレディの若々しい声が素敵ですね。
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